防音室プランの考え方
楽器の音量とご近所対策。
防音室のプランを検討する上で、目安になるデシベル(dB)という単位。
これは音の大きさを表す単位となりますので、是非お知りおきいただきたく思います。
楽器が音源として考えると、それぞれ生の音でも楽器によって音の大きさが異なってきます。
一般的には100dB以下の楽器が多いですが、ドラムなどはかなり大きな音量になりますよね。
それに加え、以外にも人の歌声が大きかったり。
こういった音源のボリュームや何の影響でどれだけ音が小さくなっていくかを把握し、防音室の選定基準にご利用いただけたらと思います。
また、屋外やマンションのお隣にどのくらい音が漏れるのか、ご近所対策も併せてご説明させていただきます。
プランの 考え方 目次 |
楽器の音量 家の壁にも防音効果がある 騒音の環境基準 住宅での防音室仕様の限界 設置部屋の検討 |
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楽器の音量
各楽器とも楽曲やプレイヤーのスタイルなどで変わりますので、あくまでも目安の表になりますがご参考にしていただけたらと思います。
たとえばピアノを例に挙げますと、ピーク時や連弾で100dBを超える場合もあるかと思いますが、平均で90db前後あたりかと思います。
そうなりますと、防音室の単体遮音性能がDr-35の場合、ピアノの音量90dBー防音室の性能35dB=55dBで、防音室の外側が55dbの音量になる計算です。
数値的にはピアノの音が防音室の外では普段の会話程度の音量になるということです。
あくまで単純計算ですので状況により上下はしますが、屋内のプランとしてはひとまずこういった単純計算をしてみましょう。
家の壁にも防音効果がある
それでは、お隣さん宅に対してはどうなのでしょうか。
戸建住宅の外壁(以下、外壁)やマンションのお隣との壁(以下、界壁)にも遮音効果が期待できます。
最近では防音室いらないね、と言えるような高性能外壁も登場しているようですが、ここでは一般的な外壁の遮音性能を35dB程度と仮定します。
マンションの界壁は45dB程度と仮定します。(両者とも大多数はいい線だと思います。)
この遮音性能の条件をご説明しますと.....
「周波数500Hzでの空気伝搬音による透過損失」の数字となります。
なんのこと?
周波数500Hzとは、その辺りで聞こえるであろう騒音の周波数(100から5000Hz)のおおむね中間値として設定された数値です。
というのは、防音室を含めどんな壁であっても、すべての周波数に同じ遮音効果を期待できるものは皆無なので、周波数ごとにすべて表記したのでは訳がわからなくなりますから、わかりやすくするため騒音周波数の平均的な標準値を作ろうということになったのだろうと思います。
基本的には、高音帯域は比較的遮音し易く、低音帯域は遮音が難しくなることが一般的です。
周波数500Hzという音は、88鍵盤ピアノでいうと一番左の「ラ」から4オクターブ上の「ラ」(A4)が440Hzですので、その右隣の「シ」より少し高く「ド」より少し低い音になります。
音階で言うと当てはまる音程のピッチはありません。
空気伝搬音とは、「音の伝わり方」でもご説明しましたが、振動など他の要因を加味しない純粋に空気だけで伝わる音を指します。
透過損失とは、光が紙や布を透過するように、音も壁を透過するので、その数字がそのまま遮音能力の数値になります。
ほとんどの防音室も、防音室には法律がないので決定事項ではありませんが、単体遮音性能は「周波数500Hzでの空気伝搬音による透過損失」を自社での測定で、それに達していようがいまいが各社自由に表記ているようです。
よって、防音室の測定条件と同じですので、防音室の単体遮音性能と外壁または界壁の遮音性能の足し算が、音源から屋外やお隣への透過損失ということになります。
この透過損失を【総合遮音性能】と呼びます。
【防音室Dr-30の凡例】
戸建住宅外壁
ピアノ90dBー防音室30dBー外壁35dB=屋外25dB(総合遮音性能65dB)
マンション界壁
ピアノ90dBー防音室30dBー界壁45dB=お隣15dB(総合遮音性能75dB)
と、単純計算ではこういった結果でほぼ問題なくなりますが、固体伝搬音の発生などがありますので総合遮音性能はこの数値よりは不利になることが多いかと思います。
騒音の環境基準
巷には、車・工事・カラスの鳴き声など探せばキリがないほど騒音があります。
楽器の音も、どれだけ上手にキレイなメロディーを奏でても騒音として扱われ、「外にこれ以上の音を出さないでくれ!」という騒音規制があります。
これは各自治体で、その中でも各都市計画の地域ごとに規制値がデシベル単位で定められており、条例として公示しているところが殆どです。
各自治体のホームページでご自身の住所から用途地域を探し、それに当てはまる騒音規制値を知ることができます。
この規制値はお住まいの建物の敷地と近隣や道路の敷地の境界線部分での測定数値となりますので、境界線までの距離があるほど音は小さくなるので有利になると言えるでしょう。
でもこれは戸建住宅やマンション全体として考えた場合。
それではマンション内の住居単位で考えた場合は、お隣や上下階に対してどうでしょうか。
この場合、数値うんぬんより、騒音を出さない努力義務のような意味合いが強いようです。
そうなると、何デシベル下げたからいいじゃないか!というお話では終わらなくなりそうですね。
これまで弊社での防音室設置後のトラブルは耳にしたことがありませんので殆ど大丈夫だとは思いますが、可能であればご近所とのコミュニケーションを図っていただいたり、必要能力が十分でない防音室の場合などは、設置後も練習時間を検討するなどの対策が必要になるかもしれません。
住宅での防音室仕様の限界
防音は、一般的に質量が重い材料ほど遮音効果が上がります。
よって、遮音性能を上げると、金額だけでなく防音室本体の重量もハネ上がってしまうのです。
そうなるとそこには、戸建もマンションも含めた一般的な住宅に設定されている「1平方メートルあたり180kg」という耐荷重の数値が立ちはだかってきまして.....
この数字は建築基準法で定められており、住宅設計で守らなければならない数値なのですが、普通の生活環境では十分な数字であるうえ、その値を上げるには建築コストも上がるので、施主が注文しない限りこの基準でしか作りません。
よって、例えば「いくら予算をかけてもいいから、このマンションの部屋の中でもっと聞こえなくして!」というようなお客様がいらっしゃたとしても、かなりレベルの高い遮音を求められた場合には、重量的に上限が出てきてしまいます。
設置部屋の検討
気を遣いたい場所への音漏れは、設置する部屋や位置で変わることがあります。
これは距離や障害物が増えるほど音が小さくなってくれる原理が働くからです。
もし設置する部屋の候補が複数あるようでしたら、そういった有利になる条件も含めご検討されることをお勧め致します。
例えば、配慮したい場所と防音室との間にもうひとつ他の部屋があるのと無いのとでは大きく変わったり、防音室の扉の前が廊下など狭い場所ですと、リビングなど広い場所と比べて、反響が起こりやすくなります。
以上のようなことも是非ご参考にしていただけたらと思います。